忘却勇者

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 それから俺達は城へと戻ってきた。  戻ったと言っても初めて来る場所なんだが、どうやら俺達はこの城に招かれてそれぞれ部屋も与えられていたらしい。  王様はたくさんの褒美をくれたし、みんなも笑顔で盛り上がったから、正しいことをしたのだと実感する。 「にしてもアンタが記憶喪失だったなんて。前から空気の読めない奴だと思っていたけどほんと迷惑」  事情を知った武闘家が物凄く辛辣に言ってきた。なぜ俺はこんな奴とパーティを組んでいたのだろう。 「なにか困ったことがあったら言ってください、僕らはいつでもあなたの力になりますよ」  と、始めて見るイケメンが爽やかに言ってくる 「誰お前?」 「戦士です」 「整形したの?」 「違います」  どうやら腫れ上がった顔が治り、元の顔に戻ったらしい。  あの戦いでみんなボロボロになっちまったが、実は賢者が回復魔法を使えたので、アイツ自身も含めてみんなすっかり元気になった。  けれど辺りを見渡してみても、賢者の姿はどこにも見えない。 「アイツどこ行ったんだ?」 「なんか一人になりたいとか言って部屋に戻っちゃったわよ」 「そっかー」 「彼が気になるの?」 「そりゃあアイツは俺の」  途中まで言い掛けたが、そう言えば俺達は内緒の付き合いだったらしい。別に隠す必要はないと思うが、まあそれは本人と相談して決めよう。  アイツが魔王にやられかけた時、体中に不思議な力が湧いてきた。間違いなく彼への思いが俺の力の源だったと言えるし、俺達が付き合っていたのもやはり事実だったのだろう。  多少複雑ではあるが、悪い気はしない。  あの戦いで世話になった分ちゃんとお返しをしてやらないと。  なんとなくうきうきする足取りで、俺は恋人の元へと急ぐのであった。
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