秘密の恋

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霊長類館のチンパンジーが、遠吠えをしている。この声はアズラ。気性の荒い雄チンパンジーは、今日も何かで腹を立てているようだ。その後に、ワライカワセミの人をからかうような鳴き声も聞こえてきた。  動物園の爬虫類館のバックヤードで、高杉は一糸纏わぬ姿で寝そべって、その声を聞いていた。一体自分の身に何が起きたのか。放心状態の回らぬ頭で考える。  同じ飼育スタッフの浅香ミオに、アオホソオオトカゲの人工孵卵器の湿度チェックを怠った事を注意していたはずだ。前にもミオが同じ過ちをした時がある。その時はまだ若いからと同僚の藤木が庇っていたが、生物の命が関わっている事だ。些細な事でも、スタッフみんなが気を付けねばならない。
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