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◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『…………』
――崩れていく。
兄さんが作った世界……いや、僕がこの世界に無理矢理に作りこんだ世界が崩れ、壊れていく。
――これでいい。元々、この『世界』ううん。この『場所』は存在してはいけなかったモノなのだから。
僕が消えたところで何も問題はない。
元々の僕が入る前のシステムに戻って、僕の代わりが出来上がって、たまにあのモンスターが現れて、人間たちは一喜一憂する。
その形は何も変わらない。そんなモノだ。
たまにある『昔の出来事』とかを特集した番組で「そんな事もあったなぁ」なんて話をするための『話題』でしかない。
自分の身近なところでこういった『大変な事』が起きなければ、人というのはいとも簡単に忘れてしまう。
『ああ、そうか』
奏兄さんは、ずっとそれを考えていたのか。
自分の見た目が、他人より目を引いてしまうからこそ『見た目』だけの印象が強すぎてしまうから、奏兄さんは自分自身が生きたという『証』を遺したかったのか……と、ようやく理解した。
でも、だからこそ。僕は、奏兄さんを殺した人たちを許せなかった。
奏兄さんに『ゲームを作る』という道に進むきっかけを作り出した『彼』が許せなかった。
だから、自分たちで足の引っ張り合いをしている人間たちに「手を貸している」フリをして、最終的には『脅し』までして、自分の目的を達成しようと相談者たちを『彼』の元へと誘った。
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