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「…………」
入るとすぐに入り口の横にあるコンビニが目に入った。
いつも弟は、ここのあるメーカーのカフェオレを飲んでいる。それこそ、俺が持って来たシュークリームを入れる冷蔵庫にいつも三本はストックされているくらいだ。
そして、いつもそのカフェオレを俺に分けてくれる。だから、今回に限って「飲み物が何もない」という事はないはずだ。
「とは言え、念には念を……だな」
たとえストックがあったとしても、ほとんど毎日の様に飲んでいるのだから、弟が怒る事はないだろう。
それに「多すぎて困る」となれば、俺が持って帰ればいいだけの話だ。
「別に嫌いでもないし」
そうして、コンビニに立ち寄り『カフェオレ』を買った俺は、慣れた手つきでエレベーターのボタンを押した。
弟が入院しているのは三階なのだが、その階にいるほとんどの人が個室である。
「…………」
別に「個室がいいです」と自主的に言ったワケではない。ただ「空いているけど、どうする?」と聞かれたので、個室にすることにした。
弟は少し引っ込み思案なところがあり、昔から体が弱く、人とあまり話をした事がなかったため、他に人がいない方が気が休まるだろうと俺が勝手に決めてしまってのだが。
「さてと」
エレベーターが三階に到着したアナウンスが聞こえ、扉が開くと、俺はそのまま目の前にあるナースステーションを右に曲がった。
毎日とまではいかないが、一週間から二週間の間に一度は大体この時間にここを訪れているため、何人かのナース、看護師さんとは顔見知りである。
そして、そのまままっすぐ弟が入院している病室の前に着いた。
「ふぅ」
軽く息を吐き、扉をノックした後、中から「どうぞ」という声が聞こえたのを確認した上で、ガラガラとゆっくり扉をスライドして開けた。
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