episode1.勘違

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「どうした?」 『あ、ごめん。こんな時間に』 「いや、別にそれは構わないが。いっ!」 『大丈夫? 兄さん』  電話をかけてきたのは、俺の弟だった。現在はとある事情で入院をしている。  俺が言うのもあれだが、兄思いの優しい弟だと思っている……のだが、ここ最近は、その度を越して段々と『お母さん化』している様に感じている。 「あっ、ああ。悪い、昨日。床で寝た上に、今日は脚立から落ちたもんだからな」 『……え。大丈夫なの?それ』 「ああ、大丈夫だ。さっき湿布も貼ったからな」 『でも、脚立から落ちたのはともかく、全身が痛いのは兄さんの自業自得だよね?』 「ははは、返す言葉もないな」 『まぁ、大丈夫ならそれでいいんだけどね。それはそれとして、気をつけなよ? ここ最近、なんか物騒になっているらしいし』 「ははは、本当に母親みたいだな。俺はそこまで子供じゃないぞ?」 『そっ、そういうワケじゃないんだけどさ。ほら、夜道って危ないって言うじゃん? 僕は兄さんが心配で……』 「ああ、そうだな。でも、大丈夫だ。今日は外に出る予定もない。それに何より体が痛い」 『ははは、そうだね』  そんな他愛もない会話をしていると、突然弟から『ところで、明日……来れないかな?』と切り出してきた。 「ん? どうした、お前から来てほしいなんて」 『えと、ちょっと聞いて欲しい話あって』 「……分かった。明日の昼頃にはそっちに行く。病院が近くなったら、また連絡する」 『うん、分かった』  弟はそう言うと、俺は向こうが電話を切るのを確認した後。自分の電話を切った。
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