小さな女の子

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「お兄ちゃん、お兄ちゃん」 背後からの声が自分に掛けられたものだと気づき、男は立ち止まった。 「落とし物だよ」 小さな女の子だと思われる可愛い声に反応し、男は胸ポケット、ズボンのポケットと落としそうな物を手探りでチェックするが、 「落としてそうな物ないんだけどなぁ」 見当がつかず、振り返って優しく声を掛ける。 「これだよ、これ」 小さな女の子が両掌を広げ、大事に抱えていた落とし物を突き出すと、 「え、なに? 全然見えないんだけど……」 男は戸惑い気づき、蒼ざめていく。 「そりゃそうだよ」 小さな女の子はその理由を答える。 「だってこれ、お兄ちゃんの目玉でしょ」 蒼ざめた顔とは裏腹に、差し出された目玉は血走っていた。
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