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「麻帆ーっ!彼氏できたっ!!」
改札を出て階段を上って出口から出たところで後ろから聞こえたテンションの高い声。
「は?…おはよ」
振り返って邪魔になるからと端に寄りながらとりあえず挨拶をすると、声を掛けてきた溝口奏音は自転車から降りて口を尖らせた。
ふわふわのウェーブがかかった栗毛色の髪にくりくりの大きな目。私より頭一つ分小さなかわいい奏音。
「おはよー!じゃなくて、彼氏!」
「うん。よかったね。おめでとー」
大学に向かって歩き出しながら返事をする。
「気持ちがこもってないっ!!」
奏音は左手の拳を握って上下にブンブン振った。
高校から一緒で今まで何度この報告を聞いたか…そして、何度泣く姿を見たか…。
奏音は男運がないというか…見る目がないというか…とにかく顔はいいだけの男が多い。
今度はどんなびっくり野郎だろう。
私の興味はそこだけだった。
また慰めないといけないな…って、どこのケーキを用意しようか考える。
「今度はどんな人?」
「駅員さん!」
「は?」
「この駅の駅員さん」
「…」
私が今降りてきたここに居たってこと?
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