現実を拾え

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朝、早く起きられない奏音は大学に近いこっちで一人暮らしをしている。 私は毎日1時間以上かけて電車に乗って通いだ。 「今度の派遣先はしばらく行くことになるからって定期もらったじゃん?それを昨日落としてさ」 イベントとかの派遣スタッフをやっている奏音。 大学へは自転車だけど確かにバイトの為によく電車には乗っている。 「てか、何で落とすの…」 「わかってたら落とさないよ」 まぁ、そうだろうけど…。 「それでね」 「え?拾ってくれたのがその駅員?また騙されてない?」 「ちょっ!聞いてよ!違うし!しかも、騙されてないから!」 訝しんで見ると、奏音はむっとする。 「拾ってくれたのはちょっとキモめのおじさん」 思い出したのかかなり嫌そうな顔をした。 「で?」 「気づいたら私の定期おじさんが持ってて…声を掛けたら絡んできて…」 「は?」 「助けてくれたのがその駅員さん」 にっこり笑われて、目を細めることしかできない。
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