現実を拾え

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「奏音。…慎重にって言ったでしょ?」 机の上に教科書とメガネを出して奏音の方は見ないで口を開いた。 「そうなんだけど…何かそんな雰囲気になって…ね?」 「ね、じゃない!」 バッと奏音を見ると奏音は慌てて目の前で手を合わせた。 「晃さんは大丈夫!」 「どうだか」 あんな大人しそうに見えたのに…手なんて繋げなさそうな感じかと思ったら…。 「めちゃくちゃうまいよ?」 「そんなこと聞いてないっ!」 ダメだ。 裏切られた気がするのは何でだろう。 「会ったばっかでそういうことするのやめなって」 ため息しか出ない。 「確かに付き合ったばっかりだけど、いっぱい話して仲良くはなったんだよ?」 「…名前と年齢知ってるくらいでしょ?」 「駅員さん」 何でそんな自信満々に答えられる訳? 「どこに住んでるの?」 「この近くだから歩きで通ってるけど実家暮らし」 「兄弟は?」 「さぁ…」 もう口籠り始めたけど? 「誕生日は?」 「それも…」 「血液型は?」 「そんなん知らなくてもよくない?」 「全然知らないじゃん」 頭が痛くなってくる。 何度痛い目見ればわかるの? また泣きつかれるこっちの身にもなってよ。
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