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私の失態
久しぶりの激しい二日酔いに、ベッドから起き上がれないでいる。
頭痛と吐き気、喉はからから。だけど、最高の夢をみたあとだったから、心の中はウキウキしていて、うっとりまでしている。
でも、やっぱり体は最悪だった。
やっとの思いでベッドから起き上がった私の目に見えたのは、あまりの驚きに二度見までしてしまった、全く見に覚えのないものたちだった。
男物の洋服にパンツ、靴下に靴・・・。
おまけに、この音は。
これは、シャワーの音じゃないか・・・。
ついに、ついに、やらかしてしまった。
酔っぱらって、やらかした。
どんなに酔っぱらっても、記憶をなくしたことなんてなかった。
酒癖も悪くなかった。
酒で失敗したことなんて、1度もないのになんで、このバリ島で・・・。
全く昨日の事が思い出せない。
おぼえていない。
全く記憶がないじゃないか!
さすがの私も焦らずにはいられなかった。
衣服の乱れはないにしろ、きっと何かあったはずだ。
酔っぱらって男の部屋、そしてシャワーの音・・・
こうしてはいられない。
早く自分の部屋に戻らなくては。
息を殺して、足音を立てないように、こっそりとドアに向かって歩き始めた時、いきなりシャワーの音が止まった。
『マズイ!』
慌てて部屋を出て、ダッシュしようとして気が付いた。
”部屋がとなり”
何回確認しても隣だ。
私の部屋が隣にある。
こんな偶然あるはずないと、何回確認しても隣だ。
バカみたいな確認を、もう何十回も続けて、私は頭をかかえた。
『ハァぁ・・・』
大きなため息が部屋中に響く。
そして、急に恥ずかしくなった。
この年でこの失態はかなりのダメージだ。
しかも、部屋が隣だなんて。
かなり気まずい。
色々考えていたら、今度は急に相手が気になりだしてきた。
若い人?
イケメン?
同世代?
それとも、ハゲたおじさん?
どれにしたってやばいじゃないか。
そんなことを考え始めたら、今度はじっとしていられなくなった。
部屋の中を何往復も歩いて、歩いて。また歩いて、落ち着こうと頑張っているけど、一向に落ち着かない。
あんなに辛かった二日酔さえも忘れて、いまはただ落ち着く事だけを考えているんだけれど、外はもう夕日で赤く染められた時刻になっているというに、私の心は全く静まる様子がないみたいなんだ。
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