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「インクの配合がうまくいってなかったようで、文字が飛び飛びに現れていたようなんだ。昨日、俺の家で再実験して分かった」
「文字が飛び飛びに……?」
そう言われてみれば、部長の文字はやたらと変な空白が入っていたことを思い出した。
ちょっと待って。文字が飛んでいたということは、もしかして……?
私はなんとなく嫌な予感がした。
「あ、あの! 部長はあの時、本当はなんて書いたんですか⁉︎」
『田宮くんへ。
今日はありがとう。俺と 付き合ってくれ
とても綺麗だ。おれ 君が好き
今度デ ート 一緒に 行かないか。
素敵 だと思う
君の こと
俺はますます 好きになった 』
私の脳内のシャッターが捉えた文面はこうだった。でも、本当は?
「そうだな、確か……。
『田宮くんへ。
今日はありがとう。俺との実験に付き合ってくれて。
緑がとても綺麗だ。おれいに君が好きそうな店があるんだ
が、今度デザートでも一緒に食べに行かないか。
素敵な店だと思うよ。それにしても、
君の言うことに従って山を登ってきてよかったな。
だって俺はますます実験が好きになったから』
……だったかな」
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