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「で、いつ言うの? おれと結婚するって話」
あー……。
わたしは玄米茶を一口飲んで、あえて彼の方へ顔を向けずに話す。
「えっとー、おいおい?」
「アカリが『自分から言いたい』って言うから黙ってたのに」
「だって今日の流れじゃ無理じゃん!」
「まぁたしかに、今日は濃すぎたけど……。
ほんとはおれ、今からだって電話して自慢したいくらいなんだよ?
やっとアカリ先輩と付き合えました、なんなら結婚します、なんなら……」
「あ、電車来た!」
そうはぐらかすわたしに、相葉くんは「まったく」と呟く。
そこそこ混んでいる電車に、相葉くんにかばってもらいながら乗り込んだ。
「アカリ、座りなよ」
相葉くんが指さした先は、一人ぶんだけ優先席が空いていた。
「えっ、いいよ。今日は調子がいいから……」
「だーめ。いくらつわりが軽いからって、今日は無理しすぎ!」
そう心配する彼に、わたしはわたしで「過保護だなぁ」と呆れながら席に座った。
相葉くんは「よろしい」なんて言って、わたしの頭をくしゃりと撫でる。
さすがに、早くみんなに言わなくちゃいけないことはわかってる。
結婚するだけならまだしも、来年になれば――。
あぁ、こんなこと言ったら、あの三人はどんな反応をするんだろう。
考えるだけでぞっとしながら、わたしは自分のお腹を、やさしく、軽くさすった。
おしまい。
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