一杯目 カシスオレンジ

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一杯目 カシスオレンジ

「今日のハツミ、キレイだったよねー」  薄手のコートをハンガーにかけながら、カホが本日何度目かの言葉を口にする。 「白無垢、素敵だったぁ。  あ、アカリ、そのジャケットもかける?」 「ボレロだけだと寒いからわたしはいいよ」 「オッケー」  サエにありがとうと言って、わたしは引き出物の袋を端に置いた。 「あっ、先輩は座ってて下さい! ほら、アキバは動く!」 「えっ、おれだけ!? ナツは!?」  ナツと相葉くんの後輩コンビは相変わらず息がぴったりで、見ていて和むというか、羨ましいというか。 「タカコ、旦那さん平気?」 「え? あ、うん、大丈夫」  わたしの質問に、タカコはかすかにほほ笑んだ。  本日、文芸サークルの同期ハツミと、ひとつ上の成瀬(なるせ)先輩は、晴れて結婚式を挙げた。  そして今わたしたちは、駅前の居酒屋でささやかな二次会にもつれこんでいる……というわけだ。
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