イマジナリーフレンド

1/1
前へ
/1ページ
次へ
僕には秘密の友達がいる。 いつも押入れから出てきて押入れに帰る。 だからその子の家族は押入れに住んでるんだと思う。 お友達と遊ぶのは本当はママがいいって言わないとダメだけど、その子はいつもママに言わなくて僕も真似をしてママなんか関係ないねってフリをして一緒に遊ぶ。 でも今日はなんだか変な感じだった。 いつもみたいにおやつを食べたりプラレールしたりしても一緒にやってくれない。 「ねえ。ロウソクある?」 そんなことを急に言いだしたりする。 「ロウソク?花火の時使った。危ないから触っちゃダメだって」 夏におばあちゃん家で従兄弟たちと花火をした。 「ロウソクちょうだい。お母さんにもらってきて」 「えっなんで?」 その子がそんな風に何か欲しがるのは初めてだったからびっくりして変な声が出た。 「すごく短くなっちゃってるから」 まあいいけど。 そんなもんあるわけないじゃんって探そうともしないママに、ちょっと自分でもどうかと思うくらい駄々をこねて、もらい物だという巨大なロウソクを出してもらった。 大抵のことは泣けばなんとかなる。 ロウソクを渡すとその子はにっこり笑って押入れに帰っていった。 なんだかもう会えないような気がして悲しくなった。 その夜僕のうちは火事で全焼した。 僕の家族はたまたま出かけていて助かった。 でも僕はそれが偶然じゃないことを知っている。 ママにロウソクをねだる時、できるだけ大きくて太いのがいいってゴネたのだ。 僕だって幼稚園でちゃんと先生の話を聞いているから寿命のロウソクの昔話ぐらい知っている。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加