小山の事情

1/1

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

小山の事情

本当のことを言ってがっかりされないか 小山は不安になった。 笑美子さんが、オレのことを ほめようとしてくれたのは わかる。 ……でも、どこかぎこちなくて  無理やりいいところを探しているみたいだ。 (それってつまり、 オレのこと、無理やりにでも、 いいところを見つけ出さなければ ならないほど、 能力が無いと思われているってことか?) そういえば、江崎が、営業成績優秀者が発表されたときに (『これくらいで落ち込んでいるようじゃ、  私には勝てないって言いたいんだ』と言ったあと、 『ライバルがこんなに弱くちゃ話にならない』 と笑美子さんは返していた)  腕を組んで悩む小山。  笑美子はそんな小山に  何か気まずくなるようなことを  言ったのかしらと  はらはらと不安に思っているとは知らずに、  さらに考え込む。 (つまり、笑美子さんはオレのことを  釣り合いのとれる相手とは思っていない!)  小山が自分の妄想でため息をつくと  笑美子が、聞いてはいけないことを  聞いてしまったのかと  ひきつった顔をして眺めている。 (だからと言って、自分を大きく見せて  結局、口先だけだったと  見下されたらと思うと、  それこそショックで眠れなくなる)  仕方ない。ここは本当のことを話すか。  がっかりされても、 また、仕事を頑張って  好感度を取りもどす。 そう決めて、笑美子のほうへ向き直った。  笑美子は幾分緊張した面持ちをしていた。 「靴を履きつぶしたっていうのは  ちょっとおおげさというか、  本当は、  前の日に、急な雨に降られて、  靴がびしょぬれで  次の日までに乾かなかった  から、前の古い靴を履いていたんだ。  そしたら、壊れて  それをみた江崎が  勘違いして……」  ここで、小山は笑美子の反応をうかがう。 「そう。江崎くんが  勘違いしていたのね」  と言って、にっこりとしている笑美子を見て  小山はショックを受ける。 (こんなに笑っているなんて、  やっぱり、自分のライバルには役不足ねと  思って安心しているんだ!)  小山は笑美子の反応にショックを受けた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加