笑美子の事情

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笑美子の事情

(あーよかった)  笑美子はほっとしてため息をついた。 小山が黙ってしまって、  何か聞いてはいけないことを 聞いてしまったのかと思って はらはらしていたが、 そうゆうことかと納得して安堵した。 (こんど、江崎に仕返ししてやろう)  笑美子は小さくガッツポーズをした。 (でも、それくらいのことを  話すかどうかをすごく悩んで  打ち明けったってことは  よっぽど、私にいうことが 嫌だったのね) 自分の考えに落ち込んで暗くなる笑美子。 小山を見ると伺うようにこちらを見た後、  ショックを受けたような顔をしている。 (つまり、私がどんな反応をするか見て、  やっぱり、最低な女だと、  ショックを受けたのね)  確かに、男性に好かれる性格はしていない。  自覚はある。  会社では見せないようにしているが、  ファッション一つとっても、  あのカバン、似合ってないとか  あの服は男受け狙ってる  ガッツいている女はとか  嫉妬だとわかっていても  気にせずにはいられない。  その言葉をはねのけるために  仕事に集中して、  それ以外を考えないようにしてき……てはない。    つい、ランチで入るカフェや休日の駅、夜のファミレス  そこで、仲のいいカップルを見かけたら  うらやましい気持ちと同時に  妬ましいと思っていしまう。  会社ではさっぱりした性格で通っているが  本当は、妬みや、ひがみ、そねみでいっぱいだ。    なんで、私はあんな風に素直になれないの?  なぜ、私は男性に自然な笑顔を向けられないの?  どうして、いつも、肩ひじ張って生きていくような  ことをしてしまうの?  答えの出ない疑問を ずっと抱えて壊れてしまいそうな時もあった。  仲のいい友だちと一緒にいても  癒される家族といても、  ずっと、考え続けている。 私だって、本当は男の人から 「君なしでは生きていけない」 「僕は君に巡り合うために生まれてきたんだ」 「君のためなら何でもする」  なんてことを言われることを 夢見ている。  でも、きっと、友だちも家族も  似合わないよと言って  笑い飛ばされるだろう。  そう思って、誰にも言ったことはない。  きっと、一生聞く機会もないのだから。  そう思ってあきらめている (こんなすぐにうじうじ、悩むような弱い人間、 誰も好きになったりしないわよね) 笑美子はますます落ち込んだ。
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