11.ハジメテノオハヨウ

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 そして自分の中のどことも知れない、もどかしさが覆い隠しているような場所が、じんじんと痛くなるのを覚えた。次第に熱くなっていくその場所が、たった二文字の言葉に震えているのが、初めて分かった。  そして、きっとそれがということだ、と初めて気が付いたのだ。きっと、これが心というものだと。このひとつひとつの鼓動に、名前があって、好きとか嬉しいとか悲しいとか、そんな尽くは全部人が名付けた心の名前なんだと、悟った。 ――ああ……。 「……マキ、です」 「うん」 「はい」  たどたどしささえ、二人は傷つかないように受け止めてくれる。 「……あのっ、私……ともだちというものがどんなものか分からないけれど、それでも、お二人の事が……知りたいと、思いました」 「あたしも、マキちゃんの事が知りたいな」 「もちろん、(わたくし)もですわ」  ぎこちなささえ、二人は消えいってしまわないように囁いてくれる。 「……なりたい、です。その……お二人のともだち、に……」 「ふふっ、ありがと!よろしくね、マキちゃん!」 「こちらこそですわ、マキさま!」  途切れそうな初めてに、二人は繋ぎとめてくれる言葉をくれる。 「……シューさん、タルトさん……!」  ぱっ、と正面を見ると、直ぐ近くに二人の顔があった。 ――あっ……これ……。  予想もしていなかった心の衝撃に、その子がそのうちに数分前に見た未来を忘れた頃、唐突に視界に入った二人の表情が、視た未来に重なった。  花びらが、ふんわりと描く言葉が紡いだ笑みだった。 「うーん、どうしよう……」  その子が、次に何をすればいいか分からず、どうしようかと視線をあちこちへ動かしていると、同じような言葉が、シューから聞こえた。 「何を、ですか……シューさん」 「うん、えっとね……マキちゃんの名前をね、どうしようかなって」 「名前……?私にはマキ、という名前が……」 「シューさまが言いたいのはあだ名のことですわ。友達同士の特別な呼び名。(わたくし)のタルトも、シューさまのシューもあだ名ですのよ」 「……特別……」  特別。友達だけでも初めての響きで揺れた心を、また揺らす響き――今日は騒がしさが途切れない。  そわそわと、余計にどうすればいいか分からなくなった数秒は、シューがいきなり大声を出したことで終わりを迎えた。 「うん、決まった!!マキちゃんのあだ名……発表します!」 「わあ、ですわ……!」 「っ……」
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