3人が本棚に入れています
本棚に追加
そして自分の中のどことも知れない、もどかしさが覆い隠しているような場所が、じんじんと痛くなるのを覚えた。次第に熱くなっていくその場所が、たった二文字の言葉に震えているのが、初めて分かった。
そして、きっとそれが心が震えるということだ、と初めて気が付いたのだ。きっと、これが心というものだと。このひとつひとつの鼓動に、名前があって、好きとか嬉しいとか悲しいとか、そんな尽くは全部人が名付けた心の名前なんだと、悟った。
――ああ……。
「……マキ、です」
「うん」
「はい」
たどたどしささえ、二人は傷つかないように受け止めてくれる。
「……あのっ、私……ともだちというものがどんなものか分からないけれど、それでも、お二人の事が……知りたいと、思いました」
「あたしも、マキちゃんの事が知りたいな」
「もちろん、私もですわ」
ぎこちなささえ、二人は消えいってしまわないように囁いてくれる。
「……なりたい、です。その……お二人のともだち、に……」
「ふふっ、ありがと!よろしくね、マキちゃん!」
「こちらこそですわ、マキさま!」
途切れそうな初めてに、二人は繋ぎとめてくれる言葉をくれる。
「……シューさん、タルトさん……!」
ぱっ、と正面を見ると、直ぐ近くに二人の顔があった。
――あっ……これ……。
予想もしていなかった心の衝撃に、その子がそのうちに数分前に見た未来を忘れた頃、唐突に視界に入った二人の表情が、視た未来に重なった。
花びらが、ふんわりと描く言葉が紡いだ笑みだった。
「うーん、どうしよう……」
その子が、次に何をすればいいか分からず、どうしようかと視線をあちこちへ動かしていると、同じような言葉が、シューから聞こえた。
「何を、ですか……シューさん」
「うん、えっとね……マキちゃんの名前をね、どうしようかなって」
「名前……?私にはマキ、という名前が……」
「シューさまが言いたいのはあだ名のことですわ。友達同士の特別な呼び名。私のタルトも、シューさまのシューもあだ名ですのよ」
「……特別……」
特別。友達だけでも初めての響きで揺れた心を、また揺らす響き――今日は騒がしさが途切れない。
そわそわと、余計にどうすればいいか分からなくなった数秒は、シューがいきなり大声を出したことで終わりを迎えた。
「うん、決まった!!マキちゃんのあだ名……発表します!」
「わあ、ですわ……!」
「っ……」
最初のコメントを投稿しよう!