狼男の姉

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 男の車を見送り、再び倉庫に戻る。まだ眠っている弟の肩を強く揺する。ガチャンガチャンと鎖が鳴った。  ゆっくりと目蓋を持ち上げた弟は、まずは自身の体がしっかりと柱に拘束されていることを確認し、ため息をついた。穏やかな表情だった。以前、「見知らぬ場所で、口の中を血だらけにして目覚めるのはもう嫌だ」と泣いていたことを思い出す。  鎖を解いてやる。弟はふらふらと立ち上がり、両手を伸ばした。私の方を向いて微笑む。 「姉さん、いつもありがとう」  口の中には、もう牙は見えない。  私は自分の心の中に罪悪感が微塵もないことを確認すると、ニッコリと微笑んで見せた。 「何言ってるの、私たち家族でしょ」  二人並んで倉庫を出る。  外の世界は朝の光に満ちていた。
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