礼拝堂へ向かう列

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礼拝堂へ向かう列

 聖堂の塔で高らかに鐘が鳴っている。朝八時、修道院一帯に響く鐘の音が、礼拝堂での祈りの時間を知らせていた。  中世イタリアの田舎に、とある修道院が山の中に孤高の城のように建っていた。平屋の石造りの建物には、修道士、助修士、見習い修道士、合わせて男性のみ三十人ほどが暮らしている。聖ベネディクト戒律が守られた、静かな平和なところだ。  俺の名前はフーゴ。よくある名前の、よくいる中世の修道士だ。まだ若くて中肉中背、ごく普通の顔立ち、茶の髪に黒いローブ。頭頂部だけを丸く剃った、トンスラと呼ばれる修道僧に特徴的な髪型をしている。特に目立った特長もなし。  この僧院の平凡な修道士だと自分は思っていた。あるときまでは。  朝の鐘の合図を聞いて俺はミサに出席するために、黒いローブを羽織って僧帽から出た。修道院付属の礼拝所へ続く通路を静かに歩く。朝のミサは全員が出席するのが決まりだ。  僧院には沈黙を守る掟があるので、通路での会話は禁止されている。無言で歩むうちに修道士達は自然に一列に並んで回廊を渡り、礼拝所へ続く扉へ向かう。  列の中を歩いている俺は、まだ何となく眠い目で、あくびをかみ殺していた。それでもアーチの続く回廊を歩いているうちに、だるかった身体も少しずつすっきりしてきた。
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