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ある日、私のあずかり知らぬ信販会社から夫宛てに書留が届いた。
訝しみながらも、差し出してきた郵便局員に判を押す。
「ご苦労様でした」
『親展』の文字を一瞥し、私はおざなりに頭を下げて玄関扉を閉めていた。
この家の管理の全てを担うことが妻である私の務めである。
契約云々の類は、たとえ名義が夫であろうと、開封する権限は私にも委ねられていた。
それ故に、保険関係しかり、税金関係しかり、住宅ローン関係等々を含めた少々煩わしい契約に関する厄介ごとを、彼は丸と私に押し付けることができるのだ。言うなれば、私は夫の有能かつ絶大な信頼に足る秘書だと言えるだろう。
躊躇うことなく封を切って、中身を確認する。
「クレジットカード……?」
クレジットカードを作るときは互いの承認を得ることが決まりとしてあった。ポイント還元に惑わされ、不用意にカードばかりが増えることを避けるためである。
なのに、私はこのカードに関しては何一つ夫から聞かされていなかった。
つまりこの日、その不穏なカードは、私の矜持にケチをつけてくれたのだ。
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