第三部

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 ショッピングモールへと続く道。歩くのはもう何度目だろうか。辺りを見回しながら足を進める。今日はいつも以上に人が外に出ていた。それもそのはずだ。今日は気候がよくてとても過ごしやすい。  右手側、カフェらしき店前のテラスではジグソーパズルをしている少年がいる。パズルは半分以上完成しており、そこにはカラフルな虹が現れていた。しかしそれだけではなく、少年の服も髪も虹色だったので驚いた。もしかしたらこの少年は虹色が好きなのかもしれない。とても奇抜な格好だが、周りの人たちは気にしている様子もない。  左手側、カラオケらしき店前の広場では、ヘッドフォンをしたセーラー服の女の子がいる。激しい音楽なのだろうか、長い髪が乱れるのを躊躇うことなくブンブン頭を振っている。ヘドバンというものだ。遠くからもその様子は捉えられ、すでに五分はこの状態なので、知能的な意味ではなく物理的な意味で少しだけ頭を心配した。  改めて観察しても、裏街道の住民には「自由」という言葉がふさわしく思える。しかし表の世界と圧倒的に違うのは、同じ空間に存在しながらも個人の時間を大事にしているところだった。住民を見るたびに実感することだ。  以前、花の手入れをしていた主婦の家らしき前を通る。今日は外に出てきていないが、花壇の手入れは済んでいた。花壇には鮮やかな色彩を帯びた花が咲いていた。私が頂いた花も色褪せることなくきれいに押し花が完成していた。  今は、押し花のしおりを作る為に使用する材料調達で外に出ていた。困った時のショッピングモール。大抵何でも置いてあるだろうと踏んでいる。  無事にショッピングモールへと辿り着き、文具売り場まで向かった。この時代にはラミネートできるものはないかと考えたが、難なく入手することができた。ラミネートと一緒にリボンと穴あけパンチ、そしてハサミも入手した。 「ハサミ…」メイの顔がよぎった。  メイにもしおりを作ってあげよう。  どうせなら色違いにしようと、赤と青と黄色、三色のリボンを手に取った。レジから袋を一枚貰って、そこに入手したものを入れた。  
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