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 あぁ、死んでしまおう。  珍しく雨だな、と外を眺めながらふと思った。真夏ということもあり、湿気が通常よりも鬱陶しく身体にまとわりつく。クーラーのリモコンを手に取り、設定温度を少し下げた。  何か情報が欲しい時は、ひとまず検索エンジンを利用してきた現代っ子だが、今回は直視できそうもない画像が出てくる予感がして気が進まなかったので、無い知識を振り絞って考える。  死ぬ為の手段は何があったか。  まずは、電車への飛び込み。  駅のホームから飛び込むだけで、特に下準備などはいらない。今から手ぶらで向かってもサクッと行えるだろう。  しかし、これは身内に一番負担のかかる方法だと、知識の乏しい私でも知っている。確か、その後の人生が潰れるほどの賠償金を支払うことになるとか。  たかが私の命一つでそんな重荷を家族に背負わせられるわけがない。  だから、これは考えるまでもなく却下だ。    次に、ビルからの飛び降り。  この方法は、マンガやドラマの世界でもよく見られる気がする。いや、よく見られるというのは、ありきたりだとかそんな風に捉えているわけではない。あくまで手段の話だ。  その理由もわかる。高いビルに上るだけで、下準備もいらなければ、身内に莫大な金銭的負担を強いることもない。  しかし、ビルからの飛び降りとなると、身体が地面と接触した際、モザイク処理が施されるほどのグロさになるに違いない。もちろん現実だから、モザイクなどかからず、全て晒け出されるわけだ。  ビルとなればまず都会である必要があり、人は常にいるだろう。そんなグロテスクなものを全く関係のない街の人たちが目撃したらどう思うだろうか。  少なくとも、グロ画像が出ることに怯えて、検索のできない耐性のない私にとったら、一生もののトラウマになるに違いない。  それに、今はネットの普及した社会だ。何度かSNS上で、『自殺の瞬間』といった悪意のある動画が出回っている、というニュースも見たことがある。いくら死後とはいえ、そんなもののネタになどされたくはない。  私がグロテスクに死ぬことで、関係のないその他大勢を巻き込む可能性があるのならば、これも却下だ。  次は、首吊りだ。  この方法は、縄と椅子を用意すればいい。縄はホームセンターに行けば入手可能だし、椅子も家にあるもので賄える。身内に金銭的負荷がかかることもなければ、周りの目を気にする必要もない。  しかし、一瞬で終わるだろうか。首吊りは首の骨が折れて、即座に息絶えると聞いたことはある。死刑にも用いられるほどだ。  だが私は素人だ。経験なんてあるはずもない。もし、縄の結び目がほどけたら、首から縄がずれていたら、椅子が上手く倒れなかったら。  どんくさい私のことだ。宙吊りにでもなれば、醜い姿で足掻くに決まってる。  それに苦しい思いはしたくない。一人、部屋でジタバタしている姿を思い浮かべると、滑稽な姿だとアホらしく思える。  また失敗したことで気が抜け、再チャレンジする意欲もなくなるだろう。そうなると、死ぬことさえ諦めることになってしまう。  確実に、一瞬で済む保証がないのであれば、これも却下だ。
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