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「へえ、小野寺さんってそういう過激なの、好きなんだ」 「はっ!? あの、これはっ!」  ぬうっ、と現れた顔にスマホの画面を覗き込まれた私は、隠すようにスマホを胸にきつく押し当てた。  これは、ピンチだ——。 「隠したいようなもの、見てたんだ……やらしい」  書庫に並んだファイルの向こう側から、不躾な視線が容赦なく向けられる。 「やらしい」と言われてしまうのは嬉しくもないが、否定はできない。  だって、さっきまで私が見ていたのは、過激表現オンパレードのアマチュア作家の小説で、あんなことやこんなことが平然と繰り広げられる想像の世界のお話で……。  いつの間にかぎゅっと瞑っていた目を開けると、さっきまで棚の向こう側にいたはずの月島さんが目の前に立ちはだかっていて、ビクッと体が震えてしまった。  月島さんの顔を見るには、二十センチほど視線を上げて、泣き出しそうな自分を鼓舞しないといけない。  怖い——。  彼の目はつり上がったアーモンド型で、眉と目の間隔が狭く、そのせいか怒っているような、睨んでいるような感じがする。  二年先輩にあたる月島さんには、入社したての頃から何かと睨まれている、ような気がするし——。  女子社員の中には月島さんのことをイケメンと騒ぐ人たちがいるのを知っているし、整った容姿をしている、とは思う。  睨んでいるような目元はともかく、鼻筋もすっと綺麗だし、唇は薄いがキュッと締まった口角はキリッとした男らしさを醸し出している。身長も、百五十八センチの私から見れば随分と大きく見える。ガタイがいい、という感じでもないが、華奢というのとは違う。世間的にはイケメンの枠に入れるタイプなのだろう。  けれども私にとって彼は、怖い感じがする人。  だから、自分から近づこうなどとはもちろんしてこなかった。仕事で話しかけられても必要な会話をするだけで、特に笑顔を振りまいたりもしなかった。  まあ、社内の誰に対してもそういう態度なのだが。  それなのにこうして誰にも知られたくはない秘密を覗かれてしまい、動揺するなという方が無理だ。  けれども本当に画面を見られたとは限らないのでは? もしかしたら、適当に言っているだけかも……。  一縷(いちる)の望みをかけて、私は月島さんに挑んだ。  
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