第十話 先輩学生達

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第十話 先輩学生達

 士官学校の授業は、一般教養から剣術、騎乗、体術、魔法、武器や防具、道具の使い方など基礎について幅広く行われた。  午前中の授業が終わり、昼休みの鐘がアレク達の居る教室に聞こえてくる。  アレクが授業で使っていた物を片付けていると、教室にガラの悪い者達が入ってくる。  制服をだらしなく着崩し、誰かを探しているような彼等を不思議そうに眺めながら、アレクがアルに尋ねる。 「なんだ? あいつら??」  アルがアレクに答える。 「やべぇ! 先輩達だ!! アレク、目を合わせるんじゃねぇぞ!!」 「先輩?」 「そうだ! ああやって、新入生に目立つ奴がいないか、探し回ってるのさ! 目を付けられたら厄介だからな」 「ふぅ~ん」  アレクとアルが話していると、先輩学生達がアレクの前に集まってくる。  先輩学生の一人が口を開く。 「お前か? 補給処で乱闘騒ぎを起こしたのは?」  先輩学生の言葉にアレクが驚く。 「へ?」  アルが先輩学生とアレクの間に割って入る。 「いやぁ~。先輩、勘弁してくださいよ。オレ達は、『絡まれた側』なんですよ!」  アルの言葉に先輩学生は、怪訝な顔をする。 「絡まれた側?」  アルがアレクを掴まえて、デタラメな言い訳をし始める。 「先輩! コイツ、女の子みたいな顔してるでしょ? だから、あいつらに絡まれちゃって! ホラ! 見てください! コイツの顔のココ。殴られて青アザが出来ているでしょ?」  そう言うと、アルはアレクの顔の青アザを指差して、先輩学生に指し示す。  アレクの顔の青アザは、皇宮でメイドに悪戯して父のラインハルトに殴られた時のもので、補給処での乱闘で出来たものでは無かった。  ミミズ腫れこそ引いていたが、青紫色に変色した跡は薄くなっていたものの、まだアレクの顔に残っていた。  先輩学生は、アレクの顔を覗き込み、アルの言い訳を確かめる。 「・・・本当だ。痛そうだな」  アルは愛想笑いを浮かべながら、先輩学生に同意を求める。 「でしょ?」  先輩学生は、フンと鼻を鳴らして両腕を組むとアレク達に告げる。 「騒動を起こすような新入生がいたらシメてやろうと思ったんだが、お前達じゃなさそうだなぁ」  先輩学生とアレク達のやり取りを聞き付けた小隊のメンバーがアレク達の元に集まってくる。  蜥蜴人(リザードマン)のトゥルムがアレクに話し掛ける。 「どうかしたか? アレク?」 「いや、別に」  亜人達のいる小隊のメンバーを見た先輩学生達が驚く。  特に蜥蜴人(リザードマン)のトゥルムは、先輩学生達よりふた回り以上、大きい体躯があるため、先輩学生達は、トゥルムにビビったようであった。  アレクの前にいる先輩学生が仲間に告げる。 「こ、こいつらじゃねぇ! おい! 向こうだ! 行くぞ!!」  そう言うと先輩学生達は、アレク達の教室からぞろぞろと出ていった。  安心したアルがアレクに話し掛ける。 「ふぅ。何とかなったな」  アレクがアルに尋ねる。 「あの人達に目を付けられたら、何かあるのか?」  アルが答える。 「先輩達に目を付けられたら、後で呼び出されて、集団で袋叩きにされるぞ! ・・・関わらないほうが良い」 「そうなんだ」  納得いかないといった表情のアレクに、アルが笑顔を見せながら話す。 「けど、先輩達、トゥルム達を見てビビっていたみたいだな! 傑作だった!!」  アルの言葉に傍らのトゥルムが不満げに答える。 「人間から見て、そんなに怖い顔しているのか? 私は??」  アレクが説明する。 「いいや。トゥルムの体格が先輩達より大きいからさ」 「そういう事か」  アレクの説明にトゥルムは納得したようであった。 「むぅ・・・。それでは、自分では抑止力には、なりませんねぇ」  ドワーフのドミトリーは悔しそうに武術の型をやってみせる。  体の大きさでは、ドワーフは人間の三分の二くらいの身長しか無いためであった。  ドミトリーの言葉にアレク達小隊のメンバーは、笑い出す。  ナディアも人差し指を立て、片目を瞑って自慢気に話す。 「なぁに。さっきの不良達がまた来たら、今度は火蜥蜴(サラマンダー)を差し向けてやるんだから!」  アルがナディアにツッコミを入れる。 「それじゃ、学校が火事になるだろ!!」  ナタリーも口を開く。 「それなら、いざという時は、私の睡眠雲(スリープクラウド)の魔法で!」  アルがナタリーにツッコミを入れる。 「教室の全員が眠っちまうよ!!」  アルのツッコミに小隊のメンバーは、再び笑い出した。 --放課後。  一日の授業が終わり、アレク達は寮に帰る準備を始める。  アルがアレクに話し掛ける。 「やっと、今日の授業が終わったな」 「ああ。いろいろと今日は助かったよ。アル」 「なぁに。大したことはしてないさ」  突然、一人の学生がアレク達の教室に駆け込んで来た。  学生はアレクを見つけると、アレクの元に駆け寄って来て、助けを求めてくる。 「大変だ! 頼む! 助けてくれ!!」  アレクが助けを求める学生をよく見ると、補給処で乱闘した相手グループの学生の一人であった。  アレクが驚いていると、アルが学生に尋ねる。 「どうしたんだ?」  学生は、呼吸を整えると口を開く。 「ルドルフが先輩達に連れて行かれたんだ!!」
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