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第四話 人間と亜人の仲間達
--夕方。
軍用列車は士官学校の専用ホームに到着した。
客車から乗り込んでいた士官候補生たちが続々とホームに降りてくる。
アレク、ルイーゼ、アル、ナタリーの4人は、同じ客室で知り合ったこともあり、4人でホームに降りると固まって士官学校の周囲を見回す。
士官学校は、学校の敷地の中に専用の鉄道の駅があるだけでなく、校舎以外にも数多くの建物があり、飛行場まで備えた広大な敷地は、鉄柵によって取り囲まれていた。
軍用列車の先頭の方の客車からは、貴族達が客車から降り、馬車に乗り換えていた。
四人は道中、周囲の施設を見聞しながら、降りた駅から寮へ向かって歩いて行く。
士官学校の寮の敷地は、貴族の子弟が居住する「貴族居住地区」と「平民居住地区」に分かれていた。
これは革命戦役前からの伝統だが、授業は貴族も平民も一緒に行われていた。
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アレクたちは寮に到着した。
寮は2階建ての建物を2棟で繋げた大きな建物であった。部屋は全て個室であり、4部屋で1棟。2棟で一つの寮になっていた。大きな食堂があり、会議などにも使用できる広さがあった。
四人は寮の中に入り、食堂に集まる。
寮を見たアレクが軽口を叩く。
「随分と年季が入った建物だな・・・」
アレクの軽口にアルも同意する。
「まぁ・・・父さんも学生時代に、この寮を使っていたようだし、革命戦役以前に建てられたものだろ? それなりに年季が入っていてもしょうがないよ」
アレク達四人が食堂で一息付いていると、新たに四人の男女が寮にやってくる。
食堂に入ってきた、新たに来た四人の姿を見て、アレク達は驚く。
四人は人間ではなく、それぞれ、獣人、蜥蜴人、ドワーフ、エルフであった。
革命戦役後、皇帝ラインハルトの『帝国種族融和政策』により、人間以外の種族にも高等教育が施される事になり、それぞれの亜人種族から招聘されたのが彼等であった。
蜥蜴人の男がアレク達に話し掛け、挨拶する。
「同じ寮の者か? 北西部から来た蜥蜴人のトゥルム・ドルジだ」
トゥルムの挨拶にアレクは驚いて詰まりながら答える。
「よ、よろしく」
残りの三人も順番に挨拶していく。
「南部の獣人荒野から来たエルザよ。よろしく」
「北東部の山から来たドワーフのドミトリー・ボグザだ」
「同じく、北東部の森から来たエルフのナディア・フロレスク」
アレクは、四人を食堂の席に招き入れる。
「遠慮せず、こっちに来て掛けてくれ。私達も自己紹介しよう」
八人は互いに自己紹介し、身の上話などをし始める。
やがて寮の管理人が現れ、八人は入寮に際していろいろと説明を受ける。
八人に対して一つの寮が割り当てられているのは、一個小隊の人員編成が八人だからとのこと。
食事は週毎に寮生が交代で行う当番制で、食材も補給処で入手すること。
補給処では食料品の他に様々な物品を購入できることなどなど、多岐に渡った。
アレクが皆に提案する。
「そろそろ、補給処に晩飯の材料を買い出しに行かないとな」
アルも同意する。
「そうだな。早めに材料は仕入れておこう。材料が品切れで無いと晩飯を食いっぱぐれるぞ?」
ルイーゼが口を開く。
「折角ですから、全員で補給処に買い出しに行きましょう」
エルフのナディアも賛同する。
「そうね。みんなで行きましょう」
こうして八人は、補給処に夕食の材料の買い出しに向かう。
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八人は補給処に入る。
皇宮育ちのアレクは、『品物の値段』など全く判らないので、商品に貼られた値札を物珍しく眺める。
主にルイーゼとナタリーが、あれこれ夕食の材料を見繕い、アルが持つ買い物かごに入れていく。
ナタリーが亜人達四人に尋ねる。
「あの・・・、皆さん、どういう物を食べるんですか? ・・・気を悪くしたら、ごめんなさい。私、知らなくて・・・」
猫のような獣耳と尻尾を持った獣人のエルザが笑顔で答える。
「私は獣人三世だから、獣人より人間に近いの。人間と同じ食べ物で大丈夫よ。それと、私は人間を食べないから、安心してね」
ドワーフのドミトリーも苦笑いしながら答える。
「私も人間と同じ食べ物で大丈夫だ。個人的には、骨付き肉とアルコールがあれば嬉しい」
エルフのナディアも笑顔で答える。
「私はベジタリアンだから、そこのところは、よろしくね」
蜥蜴人のトゥルムが答える。
「新鮮な魚があれば。ちなみに調理は不要だ」
ナタリーは亜人達四人の答えに返事をする。
「判りました」
買い出しの食糧品も、八人分だと結構な物量になっており、アレク、アル、ドミトリー、トゥルムがそれぞれ買い物かごを持って運んでいた。
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