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生まれ変わった自分
「 もう目を開けて大丈夫ですよ!」
その言葉と共に、目を開けた瞬間……
私の人生が変わり始めた。
私は、自分の顔が嫌いだった。こんな顔に生まれたから、ずっとそう思って生きてきた。
だから、今日から私は生まれ変わります。
鏡を渡され、目を開けた瞬間。パァっと花が咲いたように私の中の何かがはじけた。
「 これが、私!?」
外に出た瞬間、周りの目も木や花も空気すら全てが違って見える。車の窓ガラスに写った私も別人のようだった。
昨日までの私と、今日からの私。きっとこれから明るい未来が待っている。そう私は信じていた。
「 ドンっっ」
「 ごめんなさい 」
そう言って私にぶつかってきたのは……
サラリと長い髪をしたいい香りのする女性だった。
「 大丈夫ですか?」
「 はい、大丈夫です」
私はその女性が立ち去ったあと、ふと下を見てみると、一枚の名刺が落ちていた。
あの女性の落としものなのだろうか。
その名刺には、お店の事と女性の名前が書いてあった。なんとなく気になった私は、その名刺をカバンの中へとしまっていた。
家に帰り、名刺の女性の事がなんとなく気になり、カバンから名刺を取りだし、机の上に置いた。
「 このお店は、なんのお店だろう」
しばらくその名刺を見つめていたが、電話をかけてみる事にした。
プルルルル……
「 あの、すみません。田中さんという方はいらっしゃいますか?」
「 はい、私ですが」
電話に出たのは、あの女性だった。私は慌ててこう答えた。
「 あの今日ぶつかった者です。えっと、名刺落とされてて。またお会いしたいんです」
慌てた私は意味のわからない言葉を話していた。その女性は、クスッと小さく笑っているようにも感じた。
この私達の出会いは、あまりにも突然で運命的なものだった……。
コンプレックスの塊の私を、優しく包み込んでくれる存在になっていくのに、そう時間はかからなかった。
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