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Happily Ever After
五限の授業が終わると、いつも「帰ろう」と言って私の前を歩き始め、私よりも早く私の自転車の横に立つ。漕ぐのは私。私の自転車で私の帰り道なのだから、私は私のスピードで進みたい。そんなことお構いなしに、真由美は荷台の上に座って、絶妙なバランスをとりながら六キロメートル離れた駅までお喋りを続ける。
「ね、おかしいでしょう?」
というのが彼女の口癖で、私は面白くもなければ変でもない話に適当な相槌を打ち、乾いた笑いが風で巻き上げられ消えていく。飛ぶように過ぎた毎日は『いつまでも仲良しでした』とはならなかった。
一度読んだものは忘れないという天才肌の真由美は有名一流大学に進み、私は努力と運で二流大学に進む。高校の卒業式の日、真由美と二人乗りするのも今日で最後かと思っていたら、着物を着た上品な母親を従えて、彼女はこちらに寄ってきた。
「なんでいつも楽しくもない話に笑っていたの?」
だって、それが正しいと思っていたから。私は一瞬目を伏せて、初めて二人で帰った日のことを思い返した。
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