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「それで夜中に首が伸びるというのは本当ですか?」
「ええ、私の愛する妻の首が伸びて私をぐるぐると囲んだんです」
ここは寺の中だ。目の前には住職が袈裟を着て神妙な顔で座っている。俺は住職に向かって頭を下げた。
「どうか見に来てくれませんか?」
俺が妻の首が伸びたのを始めて見たのは三カ月ほど前だった。蚊の羽音がしたので目を覚ますと目の前に白い首があった。それを見たのは八月の暑い日の話しだ。妻の顔はカーテンの隙間から外に出ているようで見えなかったがカーテンが人の頭部の形に盛り上がっていたので星空か月でも見ていたんだろう。
それから三日置きくらいに妻の首は伸びた。妻の名前は聡美。最初は伸びた首の先にある顔と目が合うと聡美は急いで首を縮めたのだが最近はふざけているのか俺の周りを浮遊してケラケラと笑うようになってきた。普段の妻からは想像もつかないような下卑た笑い声に身の毛がよだった。
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