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彼はやはり変わっていると思う。
「ねえ数也、ちょっと聞きたいことあるんだけど」
私の家のソファでくつろぎながら漫画を読んでいる数也に声をかける。
彼は漫画から目をずらして、こちらを見た。
「ん、なに? 高校の時のあだ名? 人生で一番笑った話? クレジットカードの番号? 預金通帳の隠し場所?」
「やめなさい」
彼はあまりにもオープンすぎる男だった。「それ言って大丈夫?」と思うことも平気で教えてくれる。
以前「それは遥花にだけだよ」と言っていたけど、なんとも疑わしい。
すぐに漫画に目を戻した彼に、私は紅茶を一口飲んでから言った。
「そういうの他の人に言っちゃだめだよ」
「言うわけないよ」
「預金残高は?」
「1万7000円」
「すぐ言うじゃん。あと少なっ!」
「遥花だからね。明日給料日だから大丈夫」
そう言いながら、へへへと笑う数也。
本当に大丈夫だろうか。というか、たとえ恋人の私にでも流石に言っていいことと悪いことがあるでしょ。
「数也ってほんと全部言っちゃうよね。なんか隠しごととかないの?」
「あるよ」
「え、あるの?」
彼の予想外の言葉に驚き、私はカップを持ち上げたままの状態で聞き返した。
数也はそんな私の気持ちをよそに漫画本から目を離さないまま平然と言った。
「うん、4つ」
「4つも!?」
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