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「そういえば来週、遥花の誕生日だよね」
「うん、そうだね」
来週9月15日は私の誕生日だ。
彼と付き合ってから3回目の誕生日ということになる。
「ケーキはいつもの?」
「うん、ショートケーキ1択!」
「ほんとにイチゴが好きだなあ遥花は」
さすが15日生まれだ、と彼は笑った。
「でも大丈夫? 面接とか入ったりしない?」
「うん、絶対その日は空けとくよ。入れても近場にする」
「そっか。ありがと」
私はもう東京の印刷会社に就職が決まっている。
彼も一応この辺りの会社から内定をもらってはいるのだが、ここから東京は遠い。
このままでは遠距離恋愛になってしまうと、彼は東京での就職先を探してくれていた。
「まあいざとなったら日をずらしてもいいしね」
「大丈夫だって。誕生日までには決めとくから」
ん?
数也の言葉に一瞬違和感を覚えたが、彼は「あ、そうそう」と話を変えた。
「明後日また東京で面接だから」
「あ、じゃあ実家に帰るの?」
「うん。そうしようと思ってる」
彼はほとんど毎日うちに泊まりに来る。
泊まりに来ない日というのは、東京に面接があり、ついでに実家に顔を出してくるためこちらに戻ってこない日だ。
……待てよ。
私の猜疑心が目を覚ます。
そういえば最近東京に行く回数が増えている気がする。もちろん選考が進んでいるということなのだろうけど。
でも、本当にそうだろうか。
本当に、いつも実家に帰ってるのかな。
「遥花? 急に黙ってどうしたの」
「……ううん、なんでもない」
その日はいつもより寝つきが悪かった。
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