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「明日はいよいよ誕生日だね」
「……うん」
「ん、なんか浮かないね。ああ、21歳最後の日を惜しんでるのか。わかる。もし俺が当時生きてたら鎌倉幕府最後の日とか多分泣いてた」
「いやそうじゃなくて」
誕生日前日の夜。
数也はいつものように私の家のソファでくつろぎながら漫画を読んでいた。
その横で私はもやもやとしていた。
誰にも話さず、スマホのパスワードを変えてまで、彼は何を隠しているのだろう。
「じゃなくて?」
「あー、いや」
彼の秘密を知りたい。
でも今はそれと同じくらい、知るのが怖いという気持ちもあった。
それを知ったら、私たちはどうなってしまうんだろう。
「ううん、なんでもない」
「嘘だね」
「え」
あまりの即答に私は彼のほうを向く。
彼も真っ直ぐにこちらを見ていた。
「なんでわかるのよ」
「告白の時と真逆の顔してるから」
数也はさらりとそんなことを言った。
「なにを隠してるの?」
「……隠してるのはそっちでしょ」
一瞬、彼は考えるようにして「ああ、あれか」と言う。
「あ、もしかして気になってた?」
「夜も眠れないくらい」
「よく寝てたよ?」
「うるさい」
私が言うと。
彼は小さく笑って「そっか」と呟いた。
「じゃあ教えてあげる。今日はぐっすり寝てほしいからね」
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