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「俺には秘密が4つあるって言ったよね」
「うん」
私が頷くと、数也は人差し指を立てた。
「まず1つ目」
そう言うと彼は自分の鞄を引っ張って中から数枚の紙を取り出した。
「俺はとっくに就活が終わっていて、来年から東京に就職が決まってるんだ」
「えっ、そうなの」
「うん。これで遠恋は回避だね」
にやりと彼は笑って、今度は中指を立てた。
「それから2つ目」
数也は持っていた数枚の紙を差し出す。
私はそれを受け取った。
「東京にはこれを探しに行ってたんだ」
「……え」
私は手元の紙を見る。
それは東京近郊の賃貸物件情報が印刷されたものだった。
「二人の職場へのアクセスを考えて、家賃や設備別に何パターンか用意した」
「家を探しに行ってたの?」
「そういうこと」
ぱらぱら、とその紙を見る。
彼の言う通り各種条件が違う物件が揃えられていた。
「本当はもっと候補があったんだけど、全部見て回ってやっと厳選できた」
彼から受け取った物件の数は6件だった。
厳選した、ということはもっと多くの物件を見て回ったということだろう。
そして私は各物件の共通点に気付く。
それは、すべて2部屋以上ある間取りだということ。
「ねえ、これって」
「3つ目」
彼は薬指を立てた。
「東京に行ったら、一緒に住まない?」
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