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 数也のことはなんでも知っているつもりだった。  就職活動中の大学4年生。神奈川出身。一人っ子。漫画が好き。パクチーが嫌い。平熱は35.8度。好きなものなら毎日でも食べられるタイプ。  まだ知らないことでも、訊けば何でも教えてくれるのだと思っていた。  でもどうやらそれは違ったらしい。  私は持ち上げたままのカップをテーブルに置いて、彼に向き直る。 「えっと、隠しごとって何?」 「いやそれは言えないよ。隠しごとなんだから」 「う、確かに」  謎の正論に押し負けた。 「でしょ。でも遥花にはってことくらいは教えてあげるね。あと個数も」 「隠しごとって存在自体を隠したほうがいいんじゃない?」 「そうなの? 変なの」 「変なのはそっちでしょ」    ああ、彼が変なのは昔からだったか。 「まあ特に問題ないよ」    彼が問題ないというなら彼としては大して問題ないのだろう。  ……だけど、私としては問題がある。  だって、そんなこと言われたら気になるじゃん!  
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