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 数也とは大学の漫研サークルで出会った。  漫研と言っても「漫画を研究する」という名目で日々好きな漫画を読み耽る、というとても大学生らしい平穏なサークルだ。  そこに一緒に入った同級生の数也の第一印象は「冴えないなあ」という感じだった。  猫背気味であまり喋らず、服装もTシャツにジーンズにスニーカーを基本として、シャツを羽織るかコートを羽織るか、もしくは半袖にするかで季節に対応するスタイルだ。  そんな数也の印象が「冴えない」から「変なやつ」に変わったのは秋を感じ始めたある日のこと。  彼のTシャツが半袖から七分袖に移行した頃のことだ。   「数也くん、スマホ鳴ってるよ」  まだ私と数也しか来ていないサークルルームで、お互いに何も話さず机に積み上がっている漫画を読んでいると、パイプ椅子に置かれた彼のスマートフォンが震えていた。  ちなみに私が彼を名前で呼ぶのは「部員は仲間だから名前呼びをしよう」という青春漫画好きなサークル長の指示によるものだ。  彼は私のほうを見る。   「ほんとだ。ごめん、取ってもらってもいい?」 「うん」  私のほうが彼のスマホに近かったため、特に何も思わないまま手を伸ばす。  しかしスマホを持ち上げた瞬間、電話は切れてしまった。 「あ、切れちゃった」 「そっか。じゃあいいや」  数也はそう言って漫画に目を戻す。  彼はスマホを確認しないタイプなのかもしれない。しかし彼のあまりの即答ぶりに、私は少し心配になった。 「ほんとに大丈夫?」 「えっ。大丈夫じゃ、ない?」
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