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 私の言葉に、彼は少し不安げな顔をした。 「一応、確認しといたら?」 「そっか、そうだね」    私は彼に渡そうとスマホを差し出す。彼は受け取るため身を乗り出す。  その時、彼の膝が机にぶつかり、積み上げられた漫画が雪崩のように崩れて床に落ちた。 「あ、やべ」 「あらら」  数也は床に散らばった漫画を慌てて拾う。  そして両手に何冊もの漫画本を抱えるように持つ彼は言った。 「ごめん、遥花さん。ちょっと誰から電話か見てくれない? パスワードは1192」 「え」  あれ。  今さらっとスマホのパスワード言わなかった?  「いいの? 個人情報とかプライバシーとか」 「いいよいいよ。遥花さんだし」  その理由は意味がわからない。  まあでも本人がいいと言うならいいか。  私は彼のスマホを開いて着信履歴を表示させる。 「あ、これ保険の勧誘だよ。私もこの前来た」 「そうなんだ。じゃあよかった」  漫画の山を形成し直した数也は一息ついて、私からスマホを受け取る。 「ありがとう遥花さん」 「いいけどさ、あんまり他人にスマホのパスワードとか教えない方がいいよ?」  今はスマホがあれば何でもできる時代だ。  しかしそれは便利な反面、その小さな機器の中に多くの個人情報が詰まっているということでもある。簡単に他人に見せてはいけないものだろう。 「大丈夫だよ、遥花さんだから」 「だからその謎の信頼はなんなの」  私が言うと、へへへ、と数也は笑った。  彼の笑った顔を初めて見たが、間抜けな犬みたいでちょっとかわいい。
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