55人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉に私は頷いた。
「うん。わかる」
「わかっちゃったか」
「数也くんって、人付き合いとか空気読むとかできなさそうだしね」
「いやできるけどね。頑張れば」
彼は苦笑しながら言う。
「でも頑張らなきゃできない。俺は人間関係が苦手だから。……本当は、このサークルもこんなに続ける予定じゃなかったんだ」
「え、そうなの?」
「そうだよ。漫画が好きなだけで、飲み会は好きじゃないし。カラオケなんて絶対行きたくないし」
まあカラオケは行ってないんだけどさ、と彼はまた小さく笑った。
「でもサークルだし、そういうの避けられないことは分かってた。だから楽しくなくなったらやめようと思ってたんだよね」
数也は立ち止まった。
つられて私も立ち止まる。
「でも俺は、まだここにいる」
彼は真っ直ぐに立っていた。
猫背で漫画を読む姿ばかり見ていた私は、こんなに大きかったのか、と初めて気付く。
「君がいたから楽しめたんだ」
彼はもう震えていなかった。
「だから俺は、君のことが好きなんだと思う」
彼の告白を聞いて、私は頷いた。
どうして頷いたのか自分でもよくわからない。
彼の背景にオリオン座が浮かんでいて。
それがとても綺麗だと思ってしまったからかもしれない。
「私も、あなたのことが好きなんだと思う」
心がそのまま言葉になって零れたかのようだった。
私は自分がどんな顔でそう言ったかは分からないけれど。
へへへ、と冬空を背負う彼の笑顔は、やっぱり間抜けでかわいかった。
最初のコメントを投稿しよう!