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「今度のコンサートは、いつなの」
「また、来月」
「また、行ってもいい?」
「いいよ」
美佳の音楽は、圧倒的だった。うまく隠れているようで、僕の耳には、美佳の音楽がまっすぐ伝わってくる。
「ぽて、」
今度は割と長持ちした。
「美佳の音楽ってすごいよなぁ」
この頃、一人でいるときにも美佳の音楽が聞こえていた。
火球をじっと見つめていると、焦点がぼやけて火花が万華鏡みたいに視界に広がった。網膜が劣化して、乱視が入っているせいかもしれなかった。ずっと中腰なせいで太ももも突っ張る。
この日は僕らだけの花火大会の日だ、と決めていた。
「ぽて、」
しゃがれた声で、僕は言う。
十一度も繰り返した。
「これで最後だ」
火球がじっくりと大きくなっていく。落ちないように、慎重に育てていく。じっと見ていると、火球が回転を始めて、シャボン玉のように光沢を持って青みがかる。
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