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 授業に復帰してからも元気が全然出なかった和也は、下校の途中、パナマを探しに公園へ向かった。せめてパナマが見つかれば少しは元気が出るかもと些細な望みを抱きながらどろどろの雪道を歩いて行った。  公園に着いてみると、大分雪が積もっていた。だからパナマが落ちた儘だとしたら雪の中に埋まっていることになる。  和也はショタコン変態男と会った辺りまで来てみると、真っ白な着物を着て真っ白な長靴を履いた少女に目が留まった。積雪上にしゃがんで積雪に両手を突っ込んでいる。格好と言い、行為と言い、謎めいた奇怪な雰囲気に満ち満ちている。  何で雪の中に手を突っ込んでんだろう?冷たくないのかなあと和也は不思議に思いながら少女に近づいて行くと、少女が彼に気づいて顔を上げた。  その瞬間、むっちゃ可愛いと和也が一気に惹きこまれてしまうと、少女はにやりとして言った。 「おにいちゃん、帽子探してるんでしょ」 「えっ!」と和也は思わず叫んだ。「な、何で知ってるの?」 「ここに落ちてたから」少女は今まで積雪に突っ込んでいた両手を引っこ抜いて両手で掴んでいたパナマを差し出した。「これでしょ!」  和也は唖然として受け取り、付着している雪を払ってアミダに被ってから言った。 「何で僕のだって分かったの?」 「そんなことどうでもいいじゃん。そんなことよりあたい雪って言うの。寂しん坊の大関だから友達になって!」と雪は言って立ち上ると、手を差し伸べて来た。  何なんだ?この子は?と和也は訳が分からなくなったが、優子と比べても遜色ない美少女なので誘惑的な瞳に誘われるが儘、雪の手を握ってみた。  その途端、「うぎゃー!むっちゃつめてえ!」と和也は絶叫して手を放した。「お、お前!ひょ、ひょ、ひょ、ひょっとして、ゆ、ゆ、雪女の娘!」 「何言ってんの。あたいの名前が雪だからって違うってば!お兄ちゃん、ちょっと頭、変になってない?」 「な、な、何、言ってんだ!」そう叫びながらも和也は二日続けてショッキングな目に遭った所為で頭が変になっていたのかもしれない。 「ねえ、何、震えてるの?あたい何にも悪いことしないから友達になってよ」 「い、い、いやだー!お前の母親に見つかったら大変だ!」と和也は叫ぶが早いか、周章狼狽しながら駆けだして積雪に足を取られたり滑って転んだりしながら公園から抜け出した。
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