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帰宅後、「嗚呼、優ちゃんに振られるわ、変態男の一物を見せられるわ、雪女の娘の手を握らされるわ、僕は日本一不幸な少年だ」と嘆いた和也は、即、布団に寝込んでしまった。雪女の娘の手を握ってしまったと思い込んだ所為か、風邪をひいてしまい、優子に振られたショックと相俟って立っていることさえ出来なくなってしまったのだ。
その後、家族の看病も空しく憔悴して行くばかりだった和也は、学校を休むこと5日目にして女子生徒の訪問を受けた。
「和也、優子ちゃんが見舞いに来てくれたよ」と母に言われた和也は、憔悴していたのが嘘のように布団から勢いよく起き上がった。
和也の前に現れた優子は、風邪を移される危険性があるのにマスクもせずに目が潤んでいてほとんど泣き顔だった。
「ごめんなさい!」と劈頭第一に優子は謝ると、布団の横に正座した。「お願いだから良くなって!」
涙ながらに訴える優子を見て和也は病気のことも忘れてとても心が温かくなって嬉しくなった。
「ごめんなさいね、私の所為でそんな風になってしまって!」
「い、いや、来てくれてありがとう」と和也が弱々しく言うと、「無理しないで良いから寝ていて」と優子は優しく言った。
その言葉に甘えて和也が横になると、安心した母は部屋を出て行った。
「ねえ、ちゃんと食事取ってる?」
うんと和也が嘘をつくと、優子は持ってきた手作りのクッキーが入った缶箱を枕元に置いて言った。
「これ、小腹が空いた時にでも食べてね」
「何が入ってるの?」
「クッキーよ。私、和君の為に一生懸命作ったの」
「この僕を心配して?」
「そう、だって私、ほんとに和君に申し訳なくって」と優子は言うなり堰を切ったようにわんわん泣き出した。
それを見た和也は、感動して感激して自分も涙が目から洪水のようにあふれ出した。
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