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雪は小学四年生で和也が通う小学校の学区の隣の学区にある小学校に通っていた。
和也は、優子との仲を深める一方、雪とも付き合う内、雪が彼に初恋してしまった。
「あたし、かっちゃんが好きになっちゃた」雪は自分のことをあたいではなくあたしと言うようになり、和也のことをお兄ちゃんではなくかっちゃんと呼ぶようになっていた。
この告白を受けた時、和也は困るよりむしろ単純に嬉しかった。しかし、和也と優子が中学に進学し、雪が小学五年生になると、雪は和也の望み通り髪が長くなって服の趣味も良くなってとても魅力的になったので和也は困ったことになった。
「雪ちゃんのことが優ちゃんにばれたら大変だ。確実に破局する。けれど雪ちゃんとの交際も続けたいし・・・」優子との関係を円満に保つには雪と別れるべきだが、雪と別れれば、雪はまた孤独になる。ジレンマに陥った和也は、雪とマクドナルドでハンバーガーを食べている時に思い切って言ってみた。「僕、実は雪ちゃんと出会う前から恋人がいて今も付き合ってるんだ」
すると、「そんなこと知ってるよ」と雪はさらりと言った。「かっちゃんが可愛い子と手を繋いで歩いてるのを見たことあるもん」
「えっ!そ、そうすると」和也は思わず、もしや優ちゃんが来ていないかと辺りを見回してから言った。「それを承知の上で僕に告白して僕と付き合ってるわけ?」
「そう。あたし、かっちゃんの為ならどんどん綺麗になって見せるわ」雪は和也を独り占めにしようとする意志をオニキスのように輝く瞳に示した。
それを見て取った和也は、当惑した。優ちゃんも可愛ければ雪ちゃんも可愛い。どっちを選べばいいと言うのだ。いずれ菖蒲か杜若。両手に花とはいかんのか、嗚呼、困ったものだ。憎いね、このー!こんなことで困るなんて!そんな声が聞こえてきそうな和也であった。
雪とマクドナルドを出た後、和也はさりげなくパナマをアミダに被った。その仕草に痺れた雪は、大層はしゃいで言った。「むっちゃイケてるじゃん!かっけー!オッシャッレー!」
和也は頗る嬉しくなるも優子のことを思うと、困惑するのだった。
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