星の緑の花の歌

4/25

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
 だが、海を隔てた土地に、進出する術は心得ていた。それが僕たちの足元にある特別なツルだ。これは外側が空気を含んだ海綿のような層になっており、軽く、水に浮く。さらに、塩水を内部に侵入させないように、皮はぶあつくなっている。そう、この星を覆うツル植物は、このような防水仕様のケーブルを浜辺から海へ伸ばし、離れた土地に「入植」するのだ。  ケーブルの浮力は思ったより高く、僕たち二人を乗せても沈むことはなかった。いくらか不安定ながらも、僕たちはその上を立って歩くことができた。  やがて、僕たちは島に着いた。そこは奇妙な光景が広がっていた。海の向こうからはるばる体を伸ばし、やってきたはずのツルはその島ではがらっと色と形を変えていた。緑の細長いツルはそこには一本も生えていなかった。地面から生えている植物らしきものはみな、赤や黄色や白や紫の、カラフルな色彩になっていて、同じ色同士で絡み合って、途中から傘のように広がっていた。まるで大きな花だった。そして、それらからは甘い、よい香りがたちこめていた。 「なんだこりゃ?」 「花は咲くはずないし、紅葉か何かでしょうか?」  この星に調査をしに来た僕たちでも、首をかしげるほかなかった。こんな光景を目の当たりにするのは初めてだった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加