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と、そこでまた、さっきの歌が聞こえてきた。今度はずっと近くから、はっきりと。やはりそれは若い女のもののようだった。
「先輩、こっちです」
僕は申し訳程度の広さの砂浜から駆け出し、花のように変色したツルの森の中に飛び込んだ。
少し進むと、女はすぐに僕の目の前に現れた。花の一つの付け根に腰掛けて、歌っていた。若い女だ。亜麻色の髪と瞳の、肌の白い、美しい女だ。身に着けているものは、薄い白いワンピースだけのようで、はだしだった。長い髪がそよ風に吹かれて、かすかに揺れていた。
「君、どうしてこんなところに? 防護服なしで大丈夫なのかい?」
開口一番、こう尋ねずにはいられなった。彼女はこんな惑星の、こんな異常な花の島の中で出会ったわりには、あまりにも日常的な、普通の格好すぎた。逆に異常そのものと言ってよかった。
だが、言葉が通じていないのか、僕の問いかけに彼女は不思議そうに首を傾げるだけだった。そのサラサラの長い髪が、片側の頬に流れた。
「おい、田島、そこに何があるんだ?」
やがて山本先輩も僕のところにやってきた。
「何って、ここに女の子がいるじゃないですか」
「はあ? お前以外に誰もいないが?」
「え――」
僕は驚いた。山本先輩にはこの女の子の姿が見えていないようだったのだ。
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