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「い、いるんですよ! ここにちゃんと女の子が! 髪の長い、きれいな――」
「いねえよ。つか、いるはずねえだろ。こんなところに女が」
「まあ、そうなんですけど……」
それはわかっているけれども、実際、こうして目の前にいるわけで……。
「あ、そうか、わかったぞ! お前、幻覚を見てるんだよ!」
「幻覚? そ、そうなんでしょうか?」
それにしてはやけに鮮明な。歌声も聞こえたし、幻聴もセットってことか? うーん?
「そうだよ。おそらく、この花みたいなのが原因だ。俺は前に資料を読んだことがあるんだ。この星に広がっているツルは、元々地球の植物で、それを遺伝子操作して作られたって話だが、その元になった植物の花の香り成分には、わずかだが幻覚作用があるらしい」
「じゃあ、今、僕たちのいるこの場には、その幻覚作用のある香り成分が充満してるってことですか? 何かの間違いで咲いた花のせいで?」
「断定はできんが、たぶんな。お前の今の行動は、そうとしか考えられんし」
「はあ……」
幻なのか、この美少女は。信じたくはなかったが、先輩には見えていないのだし、そう考えるしかないようだった。僕は心底がっかりし、肩を落とした。幻の少女は、そんな僕の顔を興味深げにのぞきこんできた。
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