星の緑の花の歌

7/25
前へ
/25ページ
次へ
 それから僕たちは花の森の中に入っていった。僕にしか見えない幻の少女は、僕のあとについてきた。幻とはいえ、どういうつもりだろう。というか、幻ならせめて言葉が通じてもいいんじゃないか。こっちはかなり心細い状況なんだぞ。僕はだんだん、いらいらしてきた。  と、そこで僕はふとあることに気づいた。防護服の腕に付けられた計器を見ると、ここの酸素分圧は、さっきまで僕たちがいた緑の森よりずっと低くなっていたのだ。 「先輩、ここの酸素ってもしかして、薄いんでしょうか?」 「なんだ、急に?」 「腕の計器を見てください」 「ああ……って、なんだこりゃ?」  どうやら山本先輩の腕の計器も、僕と同じ数字を示していたようだった。僕の防護服の計器が壊れていたわけではなさそうだ。 「これなら、防護服なしで普通に活動できるレベルだぞ。なんで、ここだけ……?」  山本先輩は首をひねる。 「もしかすると、ここだけ気圧が低いんでしょうか?」 「いや、そんな感じはないだろう。酸素分圧がこのレベルまで低下するほどの気圧の変化なら、俺たちの耳がキーンってなるはずだぞ?」 「そうですね。気圧計ではかるまでもないですよね」  そもそも、ここの海抜は、さっきまでいた緑の森とそう変わらないはずだし。いや、むしろ低い? 浜から花の島の中にわけ入って奥に進んでいった僕たちだったが、その道のりはゆるやかな下り坂になっていた。たぶん、すり鉢状の地形の島なんだろう。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加