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「あ、そうだ! もしかして、このたくさんある花のせいなんじゃないですかね?」
「花が?」
「はい、きっと光合成してないんですよ。ここにある花は」
「ああ、そうか。光合成をせず、呼吸だけしてるってわけか」
山本先輩はポンと手を叩いた。納得したような雰囲気だった。
「先輩、きっとここに生えている花は、酸素を放出せず、呼吸で大気中の酸素を消費してるだけなんです。だから、そのぶんだけ酸素が薄いんじゃないでしょうか」
「だが、それぐらいなら、すぐに他の場所の大気と混ざって、濃度が戻るんじゃないか?」
「それはきっと、ここがお椀みたいな地形だからじゃないですかね? 二酸化炭素は酸素より比重が重いですし」
「つまり、そのお椀の中なら、二酸化炭素が堆積して、酸素濃度が薄くなる、と? なるほど、それなら、確かに一応筋は通るか。この星の風はとても弱いしな」
あくまで仮説でしかなかったが、僕たちはそうでも考えないと、この状況を理解することはできなかった。
と、そのとき、幻の少女が僕の前に回りこんできて、防護服を脱ぐのを促すような仕草をした。
「……そうだな。もうバッテリーも残ってないし」
幻相手に答えるように言うと、僕はもう迷うのもめんどくさくなり、するっと防護服を脱いだ。生身で外気に接したが、特に問題なく呼吸できるようだった。山本先輩もそんな僕を見て、同じように防護服を脱いだ。
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