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今から十五年前。
日本のある都市を侵略しようとした組織と、それに立ち向かった戦士がいた。
組織は次々と超能力者やサイボーグによる作戦を実行していくが、ことごとく失敗。そのほとんどが戦士に倒され逮捕されていった。
そして首領と幹部数人の逃亡によって組織は崩壊。事件は終結し、現在は残党を逮捕するための捜査が続いていた。
その組織の名は「秘密結社ブレイカー」。かつてすずみが「シャーベット」という偽名で所属していた勤め先だ。
すずみは超能力者であり、トップレベルの実力の持ち主だった。そのため若くして幹部に昇格、作戦の立案を任されるブレーンになった。一方現場に赴くことも多く、前線に立つ兵士からも慕われていた。
しかしそんな居心地の良い職場も正義の味方を名乗る戦士によって粉々に破壊され、路頭に迷うことになった。
その後、朝はコンビニ店員夜はキャバクラのホステスとして働いてきた。現在の旦那、和也とは当時住んでいたアパートのお隣さんということで仲良くなり、結婚に至った。
それからは娘が生まれて家事と育児に追われる毎日だったが充実していた。
だからもう、超能力を使って侵略行為なんてすることはないと思っていた。それなのに。
「まさか、こんなことになるなんて……」
首領の執念に負けた。
否、そこに関してはこの際すずみにとってはどうでもよかった。
それよりももっと問題なことがあるからだ。
「なんであなたがいるのよ……」
首領から送られてきた正義の味方として加わったという強敵の写真。幸運にも変身直前の瞬間を捉えた、超レアなショットだ。
しかし、そこに移るのは三十路のおじさんだ。
正確に言うと、三十二歳の子持ちのサラリーマンだ。
「和也さんが……ジャスティスレッドなんて」
そう、すずみの夫、その人である。
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