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「……よかったのか」
新田が珍しく沈んだような声で問いかけてくる。「あぁ」と掠れた声で答えて、そこに落ちた役目を終えた線香花火をそっと拾い上げる。
「最低な嘘を吐いた。でも、アイツの心を守るためだった。……いや、俺の心を守るためだったのかも」
嘘という罪を背負った俺とクラスメイト達の間に、冷えた沈黙が流れる。すすり泣く声が聞こえるのは、真っ先に嘘に協力してくれた早苗が柄にもなく泣いているからだろう。
「いつまでもこの世に留まるわけにはいかない。……でも、最後にちゃんと言ってやるべきだったかな」
先程までそこにいた親友の姿に思いを馳せながら目を伏せる。何も言わない新田が、俺の肩にそっと手を置いた。
「……あんまり自分を責めないでね。きっと、間違ってなかったと思うよ。少なくとも、翔を守ろうとした気持ちはね」
早苗が涙声で言う。そう思っていないと、きっと俺は一生後悔する。でも、こうするしかなかったんだ。
死んだのは俺じゃなくてお前だったんだって、言えるわけがないだろ。
このかくしごとが正しかったか、アイツにとっていいものだったかは、結局のところアイツにしか分からない。
この「かくしごと」が、優しい嘘だったと願うことしか、俺にはできなかった。
これは、親友の死を隠す優しさとエゴに塗れたクラスメイトのお話。
俺が、今もなお正しかったのかと後悔し続ける嘘の話だ。
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