嘘つきたちのかくしごと

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「……楽しかった」  俺は小さく脈打ってうとうとし始める落ちた線香花火を見つめた。 「今日はありがとな。龍斗も楽しんでくれてたらいいんだけど」 「もちろん楽しかった。今までで、一番。……翔」 「ん?」 「…………なんでもない」  龍斗はへらりと笑った。その切れ長の目を細めて、なかなか崩れることのない仏頂面を不器用ながらに緩ませて。  その顔が見たかったんだ。だから、本当にとりとめもない約束だったけれど、俺達にとって一番の思い出となるはずだった花火をしたかった。  いい夏の始まりだったな。  瞼の裏に焼き付いたままの煌びやかな光景と、彼の笑顔を忘れないようにそっと目を閉じた。
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