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目が醒めたのは、午前五時。
最高に気分の悪い朝だった。
二日酔いのせいで朝食なんてろくに食べれず、金もないせいで大好きな猫ももう飼えない。大好きだった本すらも読めなくなっていた。
散乱した部屋なんか気にせず、最低限だけ動き、取り敢えず、髭を剃った。
「はぁ」
溜め息を零しながら、着たくもないスーツに着替え、持ちたくもない鞄を持ち、やりたくもない仕事へと向かう。
上の人は休日だと言うのに出勤しなければならないなんて、労基は一体何を見ているのやら。それに、まだ若い方とはいえ、流石に堪える。
重い身体を動かし、革靴を履いて、家を出た。
潮臭い向かい風にぶつかりながら自転車で駅まで向かう。何とか住宅街を抜け、排気ガスで充満した大通り沿いまで出ると、今度は歩道を歩く人間を避けながら急いだ。
見飽きた駐輪場に自転車を止め、人の波へと合流し、定期券で改札へと入る。
階段を降り、ホームに着くと、黄色の点字ブロックの外側を歩き、いつもの一号車乗り場へと歩いていった。
その時、急に視界が歪み出す。
「あ、あれ。まだ、酔いが抜けて、ない、のか」
徐々に力は抜け、平衡感覚は失い、体は宙を舞った。
『列車が通過致します。ご注意下さい』
薄れ行く意識の最後に聞こえたのは、何の感情もない機械音と誰かの悲鳴だけだった。
––––この関係はきっと儚くして終わってしまうのだろう。
あの、銀河をかける鉄道のように。夜の夢のように。
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