夜が明けたら、きみに。

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そうか。 手足を動かしもがき続ける俺はようやく理解した。 俺は、人里離れたどこかに人知れず監禁されていたんだ。 ひょっとしたら、事故を起こした運転手が人に発見されないよう、俺の身体を隠していたのかもしれない。 だけど、そのことに気づいた誰かが、ようやく助けに来てくれたんだ。 頭上を見上げると、かすかに光の色を感じた。 小さく穿たれた穴から、懐かしく温かい光が差し込んでくる。 黒以外の色を目にしたのは、何日、何か月、何年ぶりだろう。 穴の先を求めて、身体を縮めて這い上がる。 点のような穴は徐々に拡がっていき、ぼやけた世界がゆっくりと見えてきた。 長かった。 ほんとに、長かった。 とてつもなく長かった夜が、ようやく明けようとしている。
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